『パンズ・ラビリンス』

〈3つの試練〉を乗り越え、オフェリアと永遠の幸せを探す旅へ。
残虐なファシストに対しレジスタンスの火の手が上がる恐ろしい現実世界と、オフェリアの無垢な心が生んだ童話的世界をメビウスの輪のようにつなぎ合わせた、スペインの鬼才ギレルモ・デル・トロ監督の“ラビリンス(迷宮)”。顔は恐ろしいが心は優しい迷宮の守護神パンは、オフェリアに告げる。「あなたは苦しみや悲しみの一切ない地底の王国から地上に出て、命を落としてしまったプリンセスの生まれ変わりに違いない」と。しかし、彼女が王国に入るためにはパンが課した3つの試練を乗り越えなければならなかった。人間の心の弱さに忍び込む誘惑に打ち勝ち、オフェリアは永遠の幸せを見つけられるのか?
カンヌ国際映画祭で大絶賛され、スペイン、イギリス、全米で数々の賞を受賞。アカデミー賞では外国映画としては異例の6部門にノミネートされ、撮影賞、美術賞、メイクアップ賞を受賞。
独創的で豪華な物語世界を旅しながら、無垢な魂を持った一人の少女のビジョンを通して、世界に蔓延する憎悪や哀しみを希望の光に変えるファンタジーの純粋な美しさが今、世界中の観客に深い感動を与えている。
Impressions...
アカデミー賞で話題になっていた作品なので、ちょっと興味津々。ミニシアター(シネ・リーブル神戸)にて鑑賞。
時間ギリギリにて到着、かなり混んでいました。けっこう暗いトーンでの始まり、冒頭で”ナナフシ”(「七節」節足動物門昆虫綱ナナフシ目に属する昆虫の総称。草食性の昆虫で、木の枝に擬態した姿が特徴的)に話しかける少女オフェリア(イバナ・バケロ)。虫はあまり得意じゃないのでちょっといやな予感です・・・・
案の定その手のシーンが・・・オフェリアにまとわりつく虫たち・・・思わず自分でも払い除けてしまいそうな”エイ!”と・・・狭い映画館では気を付けましょう~。
とまあそんなシーンは少しだったので落ち着きを取り戻し、観ていました。現実世界と幻想世界が交錯するなんとも不思議な感じを醸し出しつつ、この少女が見ている世界は果たして現実なのか?幻想なのか?まさにラビリンス(迷宮)へと迷い込んだ感覚に陥ります。
幻想の世界に出てくるパン(牧神)というヤギの頭と体をした生物がオフェリアに語りかけてきます。このパンは食べるパンとは違ってギリシャ神話に出てくる牧神をモチーフにしているようですね。
About Pan
古代ギリシャ神話の神「パン」(ローマ神話のファウヌスと同一視。牧神、牧羊神、半獣神とも呼ばれている)は、一般的に繁殖と全宇宙の神とされているが、それ以前は牧夫と羊の群れの神とされていた。
パンが心を奪われていたニンフのシュリンクスは、パンの想いから逃れるためにバラの茂みに変身してしまう。自らの想いが妨げられたことに怒ったパンは、バラの茂みを様々な長さに切り取り、それを笛にしたと伝えられている。
さらにパンは、その醜悪な性格から評判も良くなかった。目覚めるのを嫌い、怒りと共に目を覚ますと恐ろしい声を上げ、その声を聞いた者に恐怖と”パニック”を与えた。さらに何の前触れもなく姿を現しては、死の恐怖を巻き起こした。そのうえ、パンの性欲は伝説的で、ニンフ、女神、そしてサテュロスまでも、パンの情欲の対象となったとも言われている。
こうした怪物的な逸話と容姿から、中世のキリスト教徒たちはパンを悪魔扱いし、サタンと決め付けては、異教崇拝やその他の伝統に対する戦いを続けていた。
パンは死を経験した唯一の神であったため、その終わりは季節の周期や、夏から秋、そして冬への移り変わりの象徴との解釈もある。
閉鎖的な世界で少女がどんどん違う世界へと逃れるために3つの試練に挑んでいきますが、実際には彼女にしか妖精もパンも怪物も見えることはなく、所詮まやかしか、と思う反面、二つの世界が表裏一体となっていく様は目を離さずにはいられない気がしました。
さてラスト、オフェリアは幸せになれたのでしょうか?
Story...

彼が率いる兵隊さんで いっぱいでした。
でも 大尉の小間使い メルセデスだけは
オフェリアに 優しくしてくれます。
ある夜 オフェリアは メルセデスと
大尉の主治医が ゲリラ軍に
協力しているのを 見ました。

お母さんのからだより お腹の赤ちゃんが
心配なようだし なぜか男の子と
決めつけているからです。
天国へ行った 仕立て屋のお父さんが
恋しくて 仕方がありません。

妖精は オフェリアを 家の庭の奥にある 迷宮(ラビリンス)へと 誘います。
迷宮で待っていたパンは オフェリアが 地下にある 魔法の王国のプリンセスモアナ だと告げました。
モアナ姫は その昔 地上に出て 記憶を失ってしまったのです。

「道を標す本」を 頼りに 三つの試練を
クリアすれば 父である国王陛下と母である
月の女神が待つ 魔法の王国へ
帰ることができる というのです。
第一の試練は 死にかけている巨木を 救い 花を咲かせることでした。

持ち帰ることでした。不思議の国には 豪華な料理が盛りだくさん。
輝く短剣を手に入れた オフェリアは パンとの約束を破って
ブドウを二粒だけ 口にしてしまいます。
その刹那 子供が大好物の怪物(ペイルマン)が オフェリアを食べようと 追いかけます。

お母さんは難産の末
弟を生んで 死んでしまいました。
第二の試練も 失敗した
オフェリアは すべての希望を
失いました。
ところが オフェリアの前に
パンが現れました。
「最後のチャンスをあげよう。
弟を連れて 迷宮へ行きなさい」

フランコ軍に 大打撃を 与えました。
生き残った ビダル大尉は
自分の息子を 取り戻すため
オフェリアを追って 「迷宮」へ入りました。
最後の試練に立ち向かった オフェリアは 気がつけば
赤い靴を履き 魔法の王国にいました。彼女がそこで見たものは・・・・。
![]() 現実と幻想、ふたつの世界の恐怖に打ち克とうとするヒロイン、オフェリアを演じる。 04年にパコ・プラザ監督のホラー『ロマサンタ』で映画デビュー。『パンズ・ラビリンス』では1000人の候補者の中からヒロイン役を射止めた。スペインのゴヤ賞新人女優賞を12歳という史上最年少で受賞した。 |
『ロマサンタ』『ターミネーター2018』(V)『機械じかけの小児病棟』『アナーキスツ・ワイフ』など 1994年・スペイン・バルセロナ生まれ |
![]() 冷酷無比な養父、ビダル大尉を演じる。 演技や曲芸などを学んだ後、パリに移りジャック・ルコック国際演劇学校に入学。92年にマニュエル・ポワリエ監督と出会い、『La Petite Amie d’ Antonio』に出演。その後も、ポワリエ作品の常連として多くの作品に出演。00年に『ハリー、見知らぬ友人』でセザール賞主演男優賞を受賞。 |
『ニノの空』『ポルノグラフィックな関係』『ハリー、見知らぬ友人』『シェフと素顔と、おいしい時間』『堕天使のパスポート』など 1965年・スペイン生まれ |
![]() 夫を亡くし、ビダル大尉と再婚する生き方を選んだオフェリアの母親カルメンを演じる 高名な弁護士の娘として生まれたヒルは、子供の頃から歌やダンス、ヴァイオリンを学んだ。17歳の頃からTVや舞台に出演し、モデルとしても活躍。86年にビガス・ルナ監督の『欲望の裏側』で映画デビュー。 |
『欲望の裏側』『ベルエポック』『恋の力学』『ドン・ジュアン』『ベアーズ・キス』など 1969年・スペイン・バルセロナ生まれ |
![]() オフェリアの理解者、メルセデスを演じる。 モデルの母とセールスマンの父の間に生まれ、修道院で厳しい教育を受けた。幼い頃の夢は教師だったが、その後、私立探偵となり、最後はどちらともになれる女優を目指すようになる。13歳で母親のモデルエージェントに所属して活躍。すぐに女優として働き始め、14歳の時ヴィクトリア・アブリルのTVムービー「El Crimen Del Capitan Sanchez」(84)に初出演した。これまでの出演作は50本を越えるスペインの大ベテランだが、日本でその名を知られるようになったのは、母、恋人、娼婦としての顔をもつ女性を演じたアルフォンソ・キュアロンの『天国の口、終りの楽園。』(01)から。 |
『アマンテス/愛人』『ベルアポック』『ゴールデン・ボールズ』『ゴヤ』など 1970年・スペイン・マドリッド生まれ |
![]() オフェリアを迷宮へと誘うパン(牧神)と、手のひらに目を持つ怪物ペイルマンの二役を演じる。 4人兄弟の末っ子で192センチの長身。大学で演劇とテレコミュニケーションを学ぶと同時にパントマイムを趣味で習得。その後、舞台の経験を積んだあと85年にロサンザルスに移り、数多くのB級映画に出演。ブレイクスルーになったのはティム・バートンの『バットマン』(89)で、これをきっかけにマドンナを始めとするミュージシャンたちのMTVに90本以上出演。ゲスト出演した「バフィー~恋する十字架~」ではエミー賞にノミネートされた。 |
『ミミック』『ミステリー・メン』『タイムマシン』『メン・イン・ブラック2』『アダプテーション』『ヘルボーイ』『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』『ヘルボーイ2』など 1960年・米・インディアナポリス生まれ |
【Director...】 |
![]() 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンに続くイマジネーションの天才として、いまハリウッドがもっとも熱い視線を向けている存在。 保守的なカトリックの祖母に育てられる。子供時代から映画、とりわけファンタジーとゴシックホラーに傾倒し、その頃のお気に入りは60年代のハマー・フィルムをはじめ、『嵐が丘』(ウィリアム・ワイラー監督)、『タクシー・ドライバー』(マーティン・スコセッシ監督)等がある。8歳の時にはスーパー8を使って短編を撮り始めるほどの映画おたくな幼少期を送った。そのころの夢はもちろん、映画監督になることである。86年、特殊効果を専門にした自身の会社ネクロピア社を設立。92年には製作資金を集めて初の長編映画『クロノス』を監督、カンヌ国際映画祭に出品され批評家賞を受賞する等、世界中から高評価を獲得した。 |
『ミミック』『デビルズ・バックボーン』『ブレイド2』『ヘルボーイ』『ボルベール/帰郷』など 1964年・メキシコ・ハリスコ州生まれ。 |


パンズ・ラビリンス
パンズ・ラビリンス オリジナル・サウンドトラック
パンズ・ラビリンス オリジナル・サウンドトラック
この記事へのコメント
現実も夢の世界も徐々に死の香りに包まれていって、それがクライマックスに交じり合う構成も、イマジネーション溢れる映像も、デル・トロお得意の虫も、どれもこれも見事でしたねぇ。
過酷な現実から一瞬だけ逃れられるラストも、まさに正統派御伽噺でした!
こんばんは、たおさん。
コメント&TBありがとうございます。
デル・トロ監督は虫も得意なんですね、納得。
本当に不思議な世界を観ている様な、それでいて過酷な現実とオーバーラップしていくのが見事な感じで、ラストもなるほどと感じさせられるものがありました。
この映画 もう一度観たいけれど 次々に
観たい映画が来るから 無理みたい。
ラストも秀逸ですね。
今年の私のベスト入りが 決定してます。
ご訪問とコメントどうもありがとうございました!
以前から気になっていた『パンズ・ラビリンス』私はやっと先週DVDで見たばかりなんです。(感想はまだ書いていないのですが)
予備知識殆どゼロで観たのですが、私が今までに観たどのファンタジーとも一味も二味も違った斬新さにすっかり引き込まれました。
個人的には、ビダル大尉の残酷さにはちょっと目を背けてしまったのですが。。(苦笑)
あの物悲しくも美しい音楽が一層この映画を引立てています☆
こんばんは、映画ファンさん。
こちらにもコメントありがとうございます。
映画ファンさんはかなりのお気に入りのようですね。
もう一度観にいきたいと思えるのはすばらしいと思います。
観たい映画はいくらでもありますからね。
私が好きな映画『レオン』は、オリジナル版を2度、完全版は1度の計3回、映画館に足を運んだものですが、なかなかそこまではできないのが現実です。観てよかった映画は数あれど、心に残る映画はやはり数限られているものですね。
tessさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
ビダル大尉(セルジ・ロペス)は憎らしいほど嵌っていましたね。
どこかで観たことあるような悪役ぶりでした。
子守唄は歌詞がないのがよりいっそう物悲しく儚く感じました。
まさにこの映画にぴったりのBGMですね。
前回せっかくtessさんにコメント頂いたのに、ちょうどPCの故障と重なってしまい、返事が遅くなって申し訳ありませんでした。
いろいろ再設定して大変でしたが、今は機嫌良く動いておりますので、
今後はどんどんUPしていきたいと思います。
また来てくださいね。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
映画「パンズ・ラビリンス」、いい映画でしたね。
私もブログでとりあげています。
よかったら、寄ってみてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611
こんばんは、kemukemuさん。
コメントありがとうございます。
この映画は今までないファンタジーでホント秀逸でしたね。
またよかったらきてくださいね。
私はTB&コメントのお礼をしたと思ってたのに、まだしてなくて・・・
ありがとうございました!
とってもいい映画でした!ラストはほんとに神々しくて、鳥肌立ちました!
ケビンさんも虫が苦手ということで・・・、その辺の感想が一緒だったので、ちょっとうれしかったりして・・・。オフェリアの体にまとわりつくシーンがほんとに一番きつかったです・・・。
こんばんは、とろさん。
コメントありがとうございます。
いえいえこちらこそなかなかお邪魔できなくて、とりあえずTBだけとかですみません。
虫系の映画はいっぱいありますが、『ハムナプトラ』とかちょっと思い出しましたが、あれ以上でした。
実際には虫は這っていないのでしょうが、オフェリア(イバナ・バケロ)は実際映像を観て平気だったのかな~とか思ってしまいました。
昨日はパンズ・ラビリンスの記事にコメントをいただきありがとうございました^^
あのナナフシは、さすが外国産だけあり大きくて、実際に、あの大きさの虫が飛んできたら、飛び上がって驚きますよねwwΣ(゚Д゚ノ)ノ おおぉぉぉぉ~みたいなw
それにキャラクターも、日本人ウケしない『キモ系』で、余計に異様な世界感を醸し出していたように思いました。
最後は、地上では死ぬことは悲しみの象徴ですが、オフェリアにとっては
幸福な生活の始まりだったのでしょうね!
では、では!
TBよろしくお願いいたしますね☆
こんばんは、ぴーちさん。
コメント&TBありがとうございます。
ナナフシもですが、オフェリアの第1の試練に出てくる虫たち?の方がキモかったです。もう最初の試練で挫けてますね_| ̄|○
オフェリアの作り出した世界はある意味、現実逃避のような感じもありますが、彼女にとってはどっちも現実でラストは夢がかなったという結末でいいのでしょうね!