『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』

画像本年度のゴールデン・グローブ主演女優賞を受賞し、アカデミー賞の主演女優賞、脚色賞の2部門にノミネートされた、美しくち切攻い愛の物語。
 『スウィートヒアアフター』『死ぬまでにしたい10のこと』などで注目され、“過去10年間でカナダが生んだもっとも偉大な役者のひとり”と評価される女優サラ・ポーリー。短編で監督としての手腕を発揮してきた彼女の長編映画デビュー作『アウェイ・フロム・ハー君を想う』は、アリス・マンローの短編「クマが山を越えてきた」を自ら脚色し、メガホンをとった大人のラブストーリーだ。ポーリーは若干という表現がぴったりの29歳だが、複雑な人間心理を巧みな演出と映像で表現し、完成度の高い成熟した作品に仕上げている。

 ジュディ・デンチ主演の『アイリス』や若者に支持された『きみに読む物語』などアルツハイマーがテーマとなった作品が近年、注目されている。病気のつらさを前面に押し出すスタイルが共通していて、お涙頂戴のクライマックスとなっている。それに対しポーリーは、病気の妻を見守る夫に焦点を当てている。グラントが愛妻の病気と対峙し、忍耐と自己犠牲、真の愛の在り方を学んでいく過程は意外だが非常に前向きで崇高な雰囲気さえただよう。愛妻の人生から存在が欠落してしまう孤独感と寂寥感を受け入れる姿、悲しい状況下で見いだした永遠の愛を糧に再生する男の心の旅路をポーリーは叙情的に描き、幾重にも重なる心模様を浮かび上がらせる。夫婦愛の素晴しさ、そして夫婦の絆を再確認させてくれるドラマはまさに、<21世紀の『ある愛の詩』>と呼ぶにふさわしい。


Impressions...
ミニシアターにて鑑賞。座席数も少ないこともあるのですがほぼ満席状態でした。
アルツハイマーの話だとは知らずに観に行ったのですが、主人公の年齢も環境も全然違うけれども何故か観ているうちに自分に置き換えて観ていました。44年間、ずっと平和かどうかはわかりませんが、それでもずーっとふたりっきりで結婚生活をしてきたのですから、少なくともいい夫婦なのではと想像してしまいます。そんなふたりに訪れた悲劇?ともいえる病。物事だけではなく相手のことを忘れてしまうというのは、観ていていたたまれない気持ちになります。
ただあそこまで献身的に妻のことを思う夫が、他の女と出来てしまう場面が必要だったのか?ちょっと疑問な感じがしました。あれがなかったら、もっとラストのシーンがより感銘を受けたものになttのですが、そこが残念なところでした。
こういった静かな映画はたまには良いですね。
Story...
 結婚してから44年になるグラント(ゴードン・ピンセント)とフィオーナ(ジユリー・クリスティ)は互いを深く愛し、肉体的にも精神的にも満ち足りた生活を送っていた。二人の出会いはグラントが大学で神話学を教えていたときにさかのぼる。フィオーナは彼の教え子のひとりで、彼女が18歳のときに結婚したのだ。20年前に教授職を辞したグラントは、フィオーナとその後にアイスランドから移住してきた彼女の祖父が建てたオンタリオ湖沿いの家で暮らしていた。
老夫婦は春には近くの自然保護地区を散歩し、雪の季節にはクロスカントリー・スキーを楽しむのが常だ。二人仲良くキッチンに立ち、夕食を済ませた後はグラントがフィオーナに小説を朗読し、夜が更けていく。互いを思いやる温かさと笑いに満ちた生活にしかし、不調和が生じ始める。フィオーナにはアルツハイマー型認知症の影がしのび寄っており、洗い終ったフライパンを冷蔵庫にしまったり、友人夫妻を招いた夕食の席でワインが何かを忘れてしまったり。そんなフィオーナをグラントは辛抱強く見守り、彼女の失敗を訂正し続けていた。
 ある夕方、ひとりでクロスカントリー・スキーに出かけたフィオーナは、自身がどこにいるのかさえわからなくなる。夜になり、妻がいなくなったことに気づいたグラントが必死に捜索し、惚けた表情で道端にたたずむフィオーナを発見する。大事に至らなかったものの、病気を無視しておけないことに気づいたフィオーナは、老人介護施設メドウレイクへ人所することを自ら決断する。施設を事前に見学したグラントは主任のモンペリエから「施設に馴染むため入所後30日間は面会も電話連絡も禁止」というルールを知らされ、フィオーナの入所を躊躇するが、彼女の意思は変わらなかった。施設へ向かう途中、自然保護地区を通りかかったフィオーナは前春に見た水芭蕉のことを思い出す。と同時に、忘れたくても忘れられない苦い思い出を口にする。大学教授時代のグラントは、若く美しい女子大生と何度も浮気していたのだ。グラントと別れてくれなければ自殺するとフィオーナを脅した少女のことを苦々しく語る彼女の激しい口調にグラントは沈黙するしかなかった。
 1ヶ月後、面会を許されたグラントは、フィオーナが自分のことをまったく覚えておらず、車椅子に乗った男性オーブリー(マイケル・マーフィ)を非常に気にかけていることを知る。そんなグラントの気持ちも知らないフィオーナは、オーブリーは祖父がよく買い物をしていた金物店でバイトをしていた青年で、彼女の初恋の相手だったとグラントに伝える。記憶の混濁か、真実か? 
愛妻に思い出してもらおうと施設に日参するグラントだが、フィオーナとオーブリーの間に芽生えた愛情が日増しに深まっていくのを目撃し、いたたまれない気持ちになる。ベッド横の壁にオーブリーが描いたフィオーナの肖像画が貼られているのを見て、やるせなさが増すばかりだった。グラントの献身ぶりに心を打たれた看護師クリスティは、彼を温かく励ます。率直で明るいクリスティに相談するうち、グラントはフィオーナのオーブリーに対する愛情は自分に対する罰なのではないかと語る。夫婦円満に見える夫妻だったが、グラントにはフィオーナに対する負い目があると考えるだけの理由があったのだ。
 そんなある日、オーブリーの妻マリアン(オリンピア・デュカキス)が休暇から戻ると同時に夫を自宅に連れ帰ってしまう。オーブリーと離れ離れにさせられ深く落ち込むフィオーナは、ベッドに寝たきりとなる。このままでは彼女の要介護レベルが上がり、命すらも危うくなると心配したグラントは、マリアンを訪ねる。グラントが夫オーブリーを責めに来たと身構えるマリアンだったが、グラントは意外な提案を口にし……。








【CAST...】
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・Julie Christie(ジュリー・クリスティ)
1941年・印・アッサム州生まれ
父親はアッサム紅茶栽培の経営者、母親は画家。パリの寄宿学校を経て、ロンドンのセントラル・スクールで演劇を学び、57年にはエセックスの劇団に舞台に立つ。61年に「A for Andromeda」のヒロインでTVデビュー。同年に映画デビュー。65年の『ダーリング』でアカデミー主演女優賞を受賞し、一躍トップ・スターになる。

フィオーナ役
グラントの元教え子。18歳で結婚し、44年間グラントと過ごしてきたが、アルツハイマーになり自ら老人介護施設に入所することを決意する。
『若き日のキャシディ 』『ドクトル・ジバコ』『華氏451』『華やかな情事』『ナッシュビル』『天国から来たチャンピオン』『熱砂の日』『フールズ・オブ・フォーチュン』『ドラゴンハート』『ルーヴルの怪人』『トロイ』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』『ネバーランド』『あなたになら言える秘密のこと』『New York, I Love You』など
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・Gordon Pinsent(ゴードン・ピンセント)
1930年・カナダ・ニューファンドランド島生まれ
48年から51年まで従軍。その後舞台俳優として活動を始める。62年にTV進出。以来、舞台活動と共にカナダのお茶の間でお馴染みの存在となる。64年『Lydia』で映画デビュー。

グラント役
44年間連れ添ったフィオーナが介護施設に入所したことを後悔するようになる。
『華麗なる賭け』『The Rowdyman』『John and the Missus』『ぞうのババール』『アボンリーへの道』『ロンサム・ダブ』『罠』『レッド・イノセンス』『ナッシング』『リトル・ランナー』など
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・Olympia Dukakis(オリンピア・デュカキス)
1930年・米・マサチューセッツ州生まれ
両親はギリシア移民。ボストン大学で学位を取得後、セラピストとして働くが、女優を志し、母校での芸術プログラムで演技を学ぶ。俳優である夫のルイス・ゾリックと共にいくつかの劇団や劇場の設立に携わったり、ニューヨーク大学で教鞭をとるなど、演劇界に貢献している。

マリアン役
オーブリーの妻。オーブリーを介護施設に入所させていたが、経済的な問題で再び自宅に連れ帰る。ある日、グラントが訪ねてきて…
『ジョンとメリー』『狼よさらば』『月の輝く夜に』『ワーキング・ガール』『ベイビー・トーク』『マグノリアの花たち』『晩秋』『誘惑のアフロディーテ』『陽のあたる教室』『ジェフリー!』『In the Land of Women』『Poor Things』など
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監督
・Sarah Polley(サラ・ポーリー)監督
1979年・カナダ・オンタリオ州生まれ
俳優の父親マイケルと俳優兼キャスティングプロデューサーの母親ダイアン(90年没)との間に5人兄弟の末っ子として生まれる。4歳のときから子役として活躍し、85年のTVシリーズ「ナイト・ヒート」でTVデビューし、86年の『クリスマスに届いた愛』で映画デビューする。その後カナダのテレビで活躍。99年から監督業にも進出し、本作で長編映画監督デビューを果たし、第80回アカデミー賞脚色賞にノミネートされた。
以下は出演作:『クリスマスに届いた愛』『バロン』『丘の家のジェーン』『エキゾチカ』『スウィート ヒアアフター』『写真家の女たち』『めぐり逢う大地』『悪魔の呼ぶ海へ』『Re:プレイ』『死ぬまでにしたい10のこと』『LUCK ラック』『ドーン・オブ・ザ・デッド』『シュガー』『アメリカ、家族のいる風景』『あなたになら言える秘密のこと』など







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